仙台高等裁判所 昭和23年(ラ)11号 決定
抗告人の負担すべき訴訟費用額を金二百七十三円六十五銭と確定する。
二、理 由
本件抗告理由は、原裁判所の確定した本件訴訟費用額中、左の費用を抗告人に負担せしめたのは不当である。即ち、
第一審訴訟費用中
一、金三十円 昭和二十一年十二月六日弁論 鈴木代理人止宿料
二、金四十円 右東京若松間往復旅費
相手方代表者村田茂七は福島県南会津郡江川村大字湯之上に居住しているのであるから、訴訟代理人の弁論のため要した往復旅費は、右代表者の住所を基準とした江川村若松市間の旅費の範囲に止むべきであつて、鈴木代理人の事務所を基準として算定した二の往復旅費金四十円は不当である。又止宿料も右代表者の住所江川村を基準とするときは、これを要せざるものであるから一の金三十円も不当である。
第二審訴訟費用中
三、金四十八円 昭和二十二年二月十七日鈴木代理人東京仙台間往復旅費
四、金十二円 右代理人日当一日分
五、金三十五円 右止宿料一泊分
六、金三十五円 右窪田代理人止宿料一泊分
昭和二十二年二月十七日の口頭弁論期日には、相手方訴訟代理人鈴木、窪田両名が出頭したのであるが、訴訟費用は両名のうち事務所が裁判所に近い窪田代理人一人の要した費用に止むべきである。また窪田代理人は同日宿泊しなかつたから六の止宿料も不当である。
七、金十六円二十銭 上告記録送付料
右上告は抗告人のしたものであるから相手方の支出すべき理由がない。
以上の理由により原決定の変更を求めるため、本件抗告に及ぶ次第である。
というのである。
よつて順次判断する。
一、二について、
民事訴訟法上、訴訟行為をするには訴訟代理人によることを要件としないのであるから、訴訟代理人が当該訴訟行為に要した旅費止宿料が、本人の住所を基準とする旅費、止宿料を超過するときは、後者を基準とした旅費、止宿料を民事訴訟費用法の所謂旅費止宿料として計上すべきものと解するを相当とするけれども、株式会社の代表者が業務を執行する場所は、その代表者の住所ではなく会社の本店とみるべきは当然であつて、相手方会社の本店及び鈴木代理人の事務所が共に東京都にあることは一件記録により明かであるから、原審が第一審の昭和二十一年十二月六日の口頭弁論期日のために相手方の要した訴訟費用として旅費止宿料を算定するにあたり東京都を基準としたのは違法ではなく、一の止宿料三十円は相当である。しかし、当時東京都と第一審裁判所の所在地である若松市との間の往復三等汽車賃は金三十八円であるから原決定がこれを金四十円と計上したのは失当である。
三乃至五について、
民事訴訟法上、訴訟行為をするには訴訟代理人によることを要件とせぬことは前記のとおりであるから、訴訟代理人が数人ある場合といえども、当該訴訟行為に要した旅費、日当止宿料は右数人に要した全額を計上すべきものではなく、その最も少き者一人の費用のみを計上するを相当とする。従つて、原決定が本件第二審における昭和二十二年二月十七日の口頭弁論期日に要した訴訟費用として、相手方の訴訟代理人鈴木熊七、窪田正三郎両名分の旅費、日当、止宿料を計上したのは失当であつて、多額を要した鈴木代理人の三乃至五の費用は計上すべきものではない。
六について、
六の費用は原裁判所において、昭和二十三年五月二十六日附更正決定により、原決定を更正し、原決定の計算書中から削除せられているから、六の抗告理由は理由のないものといわねばならない。
七について、
七の上告記録送付料を相手方において支出したことは一件記録により明かであるから、これを抗告人の負担すべき訴訟費用として計上した原決定は違法ではない。
以上のとおりであるから、原決定の確定した訴訟費用額から二のうち金二円、三の金四十八円、四の金十二円、五の金三十五円、合計金九十七円を控除した残額金二百七十三円六十五銭をもつて、抗告人の負担すべき訴訟費用額と確定すべきである。よつて本件抗告は一部理由があるから原決定はこれを変更すべきものとし、主文のとおり決定する。
(裁判官 谷本仙一郎 猪瀬一郎 石井義彦)